Prologue
Prologue of Epilogue
ほとんど躊躇するしぐさも見せずに、彼女は引き金を引いた。
何の冗談かと思うほどに、当たり前にように彼女は引き金を引き、放たれた銃弾は男の脚を貫通し、
その銃弾に糸でもついていたかのように、彼の左足を地面に縫いつけた。
「これは――っ」
途切れそうになる意識を必死に繋ぎとめ、痛みに声が詰まりつつも、彼女をにらみつける。
「こんなもの」が彼女の手の中にあるなんて信じられなかった。
「対人禁止弾……!」
銃弾は大きく分けて二種類ある。
対人の弾丸と、対魔物の弾丸。
対人用の弾丸は相手を無力化することが最優先であり、
魔物用の弾丸は魔術を込めた銃弾で「魔物のみ」を破壊するものである。
しかし、魔物の中にはこの魔術を無力化させるものもおり、
そのために直接的な破壊力を重視した銃弾も作られている。
それが「対人禁止弾」、その名の通り人に向けて発砲することを禁止された、国に書類を送らなければ買えない銃弾。
自分を睨み付ける男を無視し、彼女はベルトからもう一丁の銃を取り出す。
「念のため、ね」
脚を撃ちぬかれた衝撃で落としてしまった黒い背表紙の本――聖書に向けて銃を放った。
銃声に一瞬遅れ、聖書は瞬く間に炎に包まれる。
「お、お前……!」
左手で太ももを押さえつけ、流れる血を必死に止血しながら、右手で聖書に手を伸ばそうとする。
だが、手が届く前に確信してしまう。これでは使い物にならない。
自然の摂理を無視した速度で燃え尽きていく聖書を呆然と眺め、聖書が灰になるころには彼女の姿はなかった。
神、アモルトをかたどった像だけが、すべてを見つめていた。
いつまでも灰を見つめていても仕方ない。
彼は自らのネクタイを患部にきつく縛りつけ、止血する。
意識を集中させ、文言を――
「くっ……」
聖書の、魔力の触媒の力を借りずに治癒呪文を使うなんてどう考えても馬鹿げていた。
右手を怪我したからといって左手をもぎ取って右手につけるようなものだ。
それでも、両手を失ってでも。
彼は足を治さなければならなかった。立ち上がらなければならなかった。
しかし、痛みに魔力を集中することができない。
そのまま、三度目の文言の途中で。あっけなく彼は意識を失った。
「カロリーネ……」
脳裏に一瞬、桃色の髪の女性の姿が映った。
Ragras Secret Guardiuns.